溺れてほしいと願うのは
01






「七海っ!! 喜ぶんだ!!」


ガララッ、とB組のドアを開けると、窓際でパンをくわえていた親友が振り返った。

彼女だけじゃなく、何人かいるクラスの人もみんなこっちを見ている。

だが気にしていられるか。

これでやっと私たちの労が報われるんだ!!



「一年生一人入った!!!!」



二秒ほどの空白の後、『マジでー!?!?!?』という七海の絶叫が教室に響いた。ついでに勢いよく吹っ飛んだメロンパンは私にぶつかったぞどうしてくれる。








奥辺第三高校(通称奥さん高)の文芸部は、部長の私と副部長の七海がひいひい言いながら部誌を発行している、休部寸前の部活だ。

そこに!

今後を託せる!!

一年生が入ってくれたのだ!!!



ドアの前でこちらを覗く長身に、Come inと手招き。

ごめんねー何か入りづらい空気作っちゃって。



「一年E組の進藤圭です。よろしくお願いします」



ぺこりとお辞儀をする進藤くんを、七海はぽかんと見ている。大丈夫だよ七海、夢でも幻でも蜃気楼でもないよ。



「よっ……!ようこそ文芸部へ!!」



ガシッ、と進藤くんの手をとって、振り回すみたいな握手をする親友は確かに私の親友だ。

私も弁当食べてた部室に進藤くんが来たとき同じことした。


二年B組の教室には、なぜかまばらな拍手が起こった。

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