魔王の娘が勇者になりたいって変ですか?
「あらら。
 アンゲロス界では、結構有名なんだけどなぁー」

 一花が、残念そうにため息をついた。

「まぁ、それは仕方ないさ……
 こっちでは、天使や神の類は悪だという宗教もあるくらいだからね」

 新一が、そういうと正が太郎と灰児の方を見た。

「なんだ?
 なにか言いたげだな?」

 灰児が、そういうと正が言葉を放つ。

「いや。
 少し気になったんだけど、君たちふたりはどうして遅れてきたのかなとね……
 スピードや実力は新一さんより君たちのほうが上だと思っていたんだけど……」

「答える必要はないだろ?」

 太郎が、そう言うと小さく笑う。

「なにがおかしい?」

 バルドが、太郎に尋ねる。

「いや、あのままお前らとベルゼブブが戦い合っていても面白かったのではないかと思ってね」

「なんだと?」

 ジョーカーが、太郎と睨みつける。

「象に踏まれて殺されるアリのようにあっけなく死んでいたんだろうな」

 太郎が、そう言ってケラケラ笑い灰児とともに食堂から去った。

「あいつらなんなんだ?」

 ジョーカーが、そう言うと新一がため息をつく。

「すまないね。
 あいつらもああ見えて勇者なんだ。
 実力は、ひとりでファルシオンの一個部隊と互角かそれ以上にやりあえるだろう」

「そうですね……
 あのふたりの魔力……
 私なんて足元に及びませんでした」

 音那が、静かにうなずくと一同は静かにうつむいた。
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