初恋 二度目の恋…最後の恋
 何も出来てないのにそんな優しい言葉を掛ける。でも、そんな言葉は私の心に温かく染みる。仕事でも何でも自分の存在を認めて貰うことがこんなに嬉しい。


 研究は成果を挙げることが一番の目的で、それまでの経過は成果が上がらなければ無駄。そんな風にずっと思っていた。


 だけど、今は違う。


 営業課で私自身が成果を挙げることが出来ない。だけど、こんな私でも何かの役に立つことが出来る。それを高見主任は教えてくれ、折戸さんと小林さんは実感させてくれる。


 本社営業一課。
 最初はどうしてここに配属されたのだろうかと思ったこともあったけど、今はここに来れてよかったと思う。自分の知らない自分を発見できるなんて思いもしなかった。


 色々な話をしながらも折戸さんの手は高見主任のマンションのキッチンを来たときよりも美しく磨いていく。高見主任は適当でいいと言うけど、折戸さんは適当というのが出来ない人らしく、完璧とまではいかなくても自分が納得するまでするらしい。



 ちょうど30分くらい過ぎた頃だろうか?


 さっきまでソファで飲んでいたはずの高見主任もキッチンのテーブルに寄りかかり、微笑みを浮かべながら私たちを見つめている。勿論手には透明の液体の入ったグラスが入っていて、揺れる瞳は色香を放っている。


「えらく綺麗になったな」


 高見主任は綺麗に磨き上げられたシンクに視線を落とす。そこには水滴すらも綺麗にふき取られたシンクがあった。

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