初恋 二度目の恋…最後の恋
 本社に勤める女の子に高見主任も折戸さんも絶大な人気があって、そんな子からは私は羨ましい環境らしい。その反面、私が研究所から来て本社営業一課に来て、営業課の中でも第一線で慣れない同行で苦労しているのを知っているので、ほかの女子社員にはある意味同情されている。


 それでも羨ましいと大変そうと思われる天秤はいい具合に均衡を保たれている。


「そのハシゴなら私は緊張で死んでしまいそうです。高見主任のあの光線は…苦手です」


「その感想は坂上ちゃんらしいね。あ、会社では美羽ちゃんは封印。お仕事モードは坂上ちゃんで」


 そんな小林さんの言葉に心が温かくなる。あの時限りではなく、私を受け入れてくれる心は今もあるらしい。酔って忘れるということもないらしい。さっき、小林さんから『坂上ちゃん』と呼ばれた時に少しの寂しさを感じた。それは土曜日に近づいたと思った距離が急に広がったように感じたからだ。


 だけど、それは仕事とプライベートできちんとオンオフするということ。


 そして、小林さんは耳元で囁く。



「昨日は折戸さんのベッドの中で頭を抱えて寝てた。マジで地球が回った」


 私はここが営業室じゃなくてあの浜辺だったら思いっきり笑っていたと思う。でも、ここは神聖な営業室。笑いだすわけにはいかない。必死に笑いを噛み殺しながら微笑む。


「今日は小林さんと同行ですよね。資料くださいね」


 私がそういうと小林さんはニッコリと笑った。


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