初恋 二度目の恋…最後の恋
 掃除まで終わると私は自分の机に座り目の前にあるパソコンに電源を入れる。

 
 電源を入れるとふわっと綺麗な花の画像が浮かんできた。パソコンは個人に会社から支給されるときには中のデータを全部フォーマットされてから配られる。それなのにパソコンを立ち上げるとデスクトップの壁紙は花の画像を設定してある。


 誰も居ない営業室で…画面に浮かぶ綺麗な花が少しだけ私の気持ちを慰める。少しだけ不安だった心が楽になる気がした。


「お気遣いありがとうございます」


 誰かわからない人に感謝の言葉を述べるとパソコンの中を確認することにした。ID番号とパスワードを入力するとパソコン上にアイコンが現れる。いくつか開いて見てみるとやはりパソコンの中には基本ソフト以外は何も入ってなかった。空っぽのパソコンは今の私そのものかもしれない。


『メールのチェックしないと』


 自分のIDを入力してメールを確認する。昨日からメールチェックはしてないのに受信メールのボックスの中に未読メールは少ない。高見主任がこれから営業課で必要なファイルにアクセスするためのパスワードなどは来ているけど、研究所関係のメールは何もなかった。


 今までは全国の研究所からの研究結果に対する報告メールが溢れていたのがないというのは、私のIDがその対象から外されたからだろう。


 自分が新しい場所に慣れる前に前の居場所が消された気がする。


 業務的なメールに加えて一緒に研究室を使っていた先輩からメールが届いていた。


 開くといつも言葉少なで何を考えているかわからなかった先輩なのに、メールには優しい言葉が綴られていた。

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