初恋 二度目の恋…最後の恋
最終章

二度目の恋

 二人で折戸さんを見送った空港から半年の月日が流れていた。


 季節はもうすぐ夏を迎える。
 今年の夏は暑いという天気予報を見ながらフッと息を吐く。年中、エアコンの掛かっている研究所では殆ど関係ないけれど、思いを馳せるのは営業一課の人たちのこと。


 暑い夏でも営業には出ないといけないから大変だろうなって思った。営業の合間に小林さんと一緒にアイスクリームを食べたのもいい思い出だけど、全部のフレーバーを制覇出来なかったなとか思ったりもする。


 小林さんの事を思うと胸が痛くなる時がある。


 あの寒かった空港での小林さんからの告白に私は何も答えを出せないまま静岡に来ていた。小林さんのことも折戸さんと同じように好きだけど…。またそれは折戸さんへの思いとは違っていて、それが何なのか私には分からない。


 悩む暇もなく私の追い打ちを掛けたのは静岡研究所からの二度目の打診。


 高見主任に言われた時に私は『静岡研究所に行きます』とハッキリ言うことが出来た。私が自分で自分の人生を決めた瞬間かもしれない。大学から流れるように研究職を続けていた私だけど、今回は自分の意志で静岡研究所に行くことを決めたのだった。そんな私の決意に高見主任はだた『頑張れ』とだけ言ってくれたのだった。


 それからは早かった。


 折戸さんの転勤からすぐに私の辞令は下りて、一週間後には静岡に赴任が決まっていた。静岡ではすぐにでも来てくれと言うことだったけど、さすがにそれは無理なので、一週間の時間だけ貰うことが出来た。



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