初恋 二度目の恋…最後の恋
 小林さんなら私がオレンジジュースとかウーロン茶と言っても、笑いながら注文してくれたかもしれない。そんな気がした。まだ今日会ったばかりなのに…。


 たった一回、一緒に豚の生姜焼き定食を食べただけなのに私は小林さんが本当にいい人だとインプットされている。


 テーブルの上にビールのジョッキが並べられて、急に折戸さんが立ち上がる。いきなり、真横で立ち上がるから驚いてしまう。いきなり立ち上がると思わなかった。


「では。ジョッキを持ってください」


「折戸。別に座ってでいいだろ」


 私の前に座る高見主任はネクタイを緩めながら、溜め息を吐く。溜め息を吐きながらも、折戸さんを見つめる瞳は優しくて…。嬉しそうにさえも見えている。


「立たないと気合いが入らないので…。」


 ただ乾杯の音頭を取るだけで立ち上がる必要はない。ついでに気合いも必要ない。だけど、折戸さんは立ち上がらないといけないし、気合いも入れないといけないらしい。


 みんながクスクス笑いながらジョッキを持つと、折戸さんはみんなを見回した。


「では、坂上さんの歓迎会を行います。…かんぱーい。」


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