強引男子にご用心!

「何だよ」

何だよじゃないよ。

付き合い始めたばかりなのに指輪は重いでしょう?

それっくらい、私でも解るよ?


「ほれ。着けてみろ」

店員さんが白手袋をつけて出してくれたのは、小さい石のついた、可愛らしいデザインのプラチナリングで……

なにやら店員さんがうんちくを言っているらしいけど、耳には入ってこない。

全く入ってこない。


ぼんやりして、頭は真っ白で。


磯村さんはニヤニヤして、繋いだままだった右手の薬指に指輪をはめた。


「…………」


ふ、深い意味は、特に無かったらしい。


良かったと思っていいのか、残念と思えばいいのか。

どう思えばいいのか。

き、期待してたのかな?
期待したってばれたかな?

ニヤニヤしている磯村さんを横目で見て、それからはめられたリングを眺める。

「あんただとゴテゴテよりこれくらいのシンプルなリングだろうなぁ」

言いながら、ニヤニヤが止まっていない。

そうだな。
磯村さんには、バレてるよね。

だって、顔が熱いもの。


「可愛いな、お前」

「可愛くない!」

「俺は男だから可愛くなくていいだろうが?」

たしかにね!
でも、そういう意味では言ってないのね!

「それにリング選ぶにしても“そういう”リングはサプライズでプレゼントするだろうよ」

「わ、解らないわよ。磯村さんは変だから!」

「まぁ、趣味は変わってると自分でも思うけどな」

そう言いながら、いつの間にか手にはネックレスを持っていて、それを着けてくれながら私の全身をさっと眺める。


何だか品定めされてる気分。


「ん……いいな。これ下さい。あと着けていくから鋏貸して」

「はぁ!?」

借りた鋏でパチンとネックレスについていたであろう値札を切って、さっさとカードで支払をしようとする磯村さん。

「ちょ……っ」

「聞かない聞かない」

適当にあしらわれて、結局、私はプラチナリングとセットだったらしいネックレスをプレゼントされた。

それから店を出て、また右手を捕まれながらブラブラ歩き始める。


「こ、困る」

「何で」

「だ、だって、アウトレットって言っても、こうした物は高いし」

「いいだろう、たまには。お前は安上がりな女だな」

「や、安上がりな女じゃないわよ!」

失礼ね!
それじゃ私が“安い女”みたいじゃないの!

「いや? ある意味では高くつく女だろうが」

「え?」

ふっと影がさして、コツンと額と額がぶつかって。

鼻先スレスレでニヤリと笑う。

「こういう時は、ありがとうか、キスか。どっちがいい?」

「え……う……」

「んじゃ、キスか」

「ぁありがとうございますぅ~!」

ばっと離れて、荒くなった息で磯村さんを睨み付ける。

「こ、こんな所でキスとか、ば、馬鹿じゃないの?」

「タイミング悪いとできねぇし」

「今のどこにそんな良いタイミングがあったのよ!」

「あんたがポカンとした瞬間?」

「お願いだから、そんな瞬間を狙わないで」

「狙うだろう。その方が面白い」

この鬼畜め!
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