強引男子にご用心!
「すみません。近いです」
「これくらいも駄目? なら、これくらいか」
半歩だけ避けてくれたけど、なんなの。
「そもそも、どうして一緒に歩く必要があるんですか。自分の買い物済ませてしまえばいいでしょうに」
「いや。軽い嫌がらせ?」
嫌がらせなの?
「キスして気絶されたのは初めてな経験なもので」
プライドでも傷ついた?
そんなプライドは捨ててしまえ。
黒いことを考えていたら、
「手を掴んでもいいか?」
「何なの突然」
「いや? ここんとこあんた観察して解った事だが、予め解ってたら握手くらいは出来てたみたいなんで」
「だからって掴む必要はないでしょう」
「まぁまぁ、試しに」
言葉と同時に、カートを押していた手を握られた。
握られたまま、そのまま歩く。
「そんで、今日の夕飯は何だ?」
「ゆ、夕飯?」
「まさか飲み物買うだけでカートを選ばないだろ」
「エ、エビチリ」
ニギニギと握られた手が、とても気になるんですけれど。
「エビチリかぁ。他は?」
「他は……イカをバター炒めに」
「まるっきり酒のつまみだなぁ」
そう言いながら、親指で優しく手の甲を撫でてくる磯村さん。
不快……では、ない。
不快ではないけれど、くすぐったい。
気持ち悪くはならないけれど……
「もう、離して下さい」
呟くと、離れていく手のひら。
それから睨むと、楽しそうに笑われた。
「いいねぇ、伊原さん」
「な、何がですか」
「俺さ。意地張ってる女見るとさ?」
「な……んですか」
「おもいっきりナカせてみたい衝動に駆られるんだよね?」
「…………」
とても楽しそうに笑顔の磯村さん。
目が……目が笑ってない。
キ……キチク発見。