強引男子にご用心!


「んで、男と飯に行くって言うのに、あんたはデ二ムにパーカーな訳?」

うちに最寄りの駅前。

ここしかないから、急いで来たのに、その言い種はなんだ。

「そっちが退社後指定したんでしょう。退社後は動きやすい服装なんです」

磯村さんは私の服装を見て、それから自転車を見て、それから駅の改札を振り返った。

「……なるほど。つくづく大変だな。電車にも乗れないか」

「乗れない訳じゃありません。混んでると乗らないだけです」

「タクシーにも乗れない?」

「……知ってる人の車なら、乗れます」

磯村さんは呆れた顔をして肩を竦めた。

「とりあえず、家に最寄りの駅前指定で良かったかな。着替えて来い」

「え?」

「着替え。その格好だと居酒屋くらいしかいけねぇだろうが。めかし込めとは言わねぇから、せめて食事行くくらいな格好して来い」

「家に帰れと?」

「……一緒についていく」

歩き出す磯村さんに、慌てて自転車を押しながら付いていく。

「方向はこっちか」

「あ、はい」

てくてく歩きながら、無言の磯村さんを見上げる。

退社後にご飯って言うから、居酒屋に行くもんだと思ってた。

居酒屋は嫌だけど、食べるのに付き合えばいいだけだからと納得して来たわけなのに。

「スカートの方がいいですか?」

「あるならそっちの方がいいな。あんた足綺麗だし」

「…………」

このタラシめ。

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