強引男子にご用心!

そして就業自時間も過ぎた時刻。

定時上がりのロッカールームは混み合うから、少しだけ棚の整理をしてから総務部を出る。

エレベーターもこの時間帯は混むから、階段を降りるのが日常化。

思えば健康的かもしれない。

空いてきたロッカールームで着替えをして、駐輪場から自転車を引き取ると、マンションに向かって漕ぎ出す。

買い出しは今日にしようか。

そう思っていつものスーパーで、磯村さんを見つけた。


……何だか、普通、ここまで頻繁に知り合いに会うものなんだろうか。


「買い出しか?」

「はい。夕飯の材料もないし」

「何作るの?」

「何にしようか考え中です」

「ふーん」

そう言いながら、カラカラとカートを押す隣りについてくる。

「営業なのに定時あがりですか?」

「営業だからって毎日残業しねぇよ。接待なんかは原則禁止されてっから」

そうなんだ。

「総務が忙しいのは決算期と月一さんくらいですね」

「ツキイチサン?」

「広報がメインですが……社内報の小冊子の制作に追われます」

各部署の人のインタビューや、部長クラスの対談やら、そんなのが載った小冊子。

たった4ページ程度の冊子だけれど、フルカラーの社内報の制作は、かなり大変。

「あー……毎月配られてるやつか。あれはあんたらが作ってたんだ」

「名前も覚えて貰えない社内報ですけれどね」

毎月のネタに悩む広報は大変。

社員用に作られた専用誌だから、ある意味マニアック。

あ。お魚安い。

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