心動
聞こえない声、再び

それから、何ヶ月か経ち
少女達は高校生になる。

『あー、だる 』
『入学式とかほんとやるいみある?』
『あの人超イケメン! 』
『あいつと一緒の高校かよ』

入学式は、かなりの心の声が聞こえる。
緊張と不安がある中、特殊な能力を持つ菫は、人には聞こえない心の声と戦っていた。


「只今より、愛場(マナバ)高等学校の入学式を始めます。」

そして、入学式が始まると同時に菫は静かに耳を塞いだ。


1時間近くかかった入学式も終わり、初めての高校の教室。
そこには、菫と梅がいた。
「菫!」
教室に入ろうとためらう、菫に梅が話しかける。
「教室同じだよ!一年B組!」
そう言うと、菫はキラキラ目を輝かせた。
「うんうん♪嬉しかろう、嬉しかろう!」
菫の頭を撫でて、教室に入る。
そして、黒板には席の案内が書かれていて、
名前順であることを確認した。

梅とは少し離れた、一番後ろの席になった。
少し寂しそうな顔をする菫に梅は、
「お昼はご飯食べれるよ!」
と笑顔で励ました。
菫もつられて笑顔になる。

『えーめっちゃ可愛い子いるじゃん、喋りかけてみよう』

「ねーねー!君名前なんてーの?」
菫は一瞬誰に話しかけているのかわからず、キョロキョロする。
「?」
「キョロキョロしてる君だよ君!」
前からのぞきこまれる。
茶髪で黒縁メガネの少年だ。
きょとんとした顔で見る菫は、
細い声で答えた。
「三葉(ミワ)菫です。」
「菫ちゃんかー!!可愛い名前だね!」
『ちょーやばいこの子』

聞きたくない心の声も、聞こえてしまう。
少し、困った顔で愛想笑いをする。

「おーい、菫に気安く喋ってんじゃないよー。」
そう言ったのは梅だった。
心配して、来てくれたようだった。
「えー?何も食ってやろうとか思ってないよ!」
『食う予定かもだけどさ』
「うちの許可なく手出したら、鼻っ柱折り曲げてやるからね!」
梅は強い。小学校の時から、菫を泣かす男の子を梅が泣かしてきた。
「ボディガードじゃん!」
そういって少年は笑う。
「まぁ、まぁ!仲良くしようよ!俺、谷上(ヤガミ)稔之(トシユキ)ね!」
そう言うと、梅も
「柴波(シバナミ)梅、よろしく!」
と自己紹介した。
ふと、右隣を見るといつの間にか少年が本を読んで座っていた。綺麗な黒髪で、短髪である。
『あれ?』
それと同時に梅の制服の裾をちょいちょいっと引っ張る。
「ん?どうした…あ!!!」
梅は瞬時に思い出して、指をさした。
「公園で犬の散歩してた少年!」
そう言うと、右隣の少年はビックリした顔をして、読んでいた本を落とした。
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