素顔のマリィ
女子と戯れる自分がなんだか人事のように思えてもどかしかったけど。
じゃぁ、わたしの本質はいったい何なの?
わたし一人で何ができるの?
なんて考えてもわかる分けない。
ただ、流加と過ごした毎日がわたしにとって最高の宝物だったというだけだ。
流れ行く雲を眺めたり、蟻の行列を眺めたり、流加の後ろ姿を追ったり。
いつでもわたしの先には流加がいて、立ち止まってわたしを呼び寄せてくれた。
「ほらマリィ、見てごらん」って、好奇心一杯のクルクルした目でわたしを待ってくれていた。
あぁ、さらば楽しかった日々。
それでも少しだけ、わたしの習慣となって残ったものがある。
立ち止まって空を見上げる癖とか。
動く物を見つけると、つい目で追ってしまったり。
大きな木を目印にしたり。
流加の顔は、次第に思い出せなくなってしまっていったけれど、わたしの中の冒険心は小さな火種となってくすぶり続けていたんだと思いたい。