素顔のマリィ

鈴木君は、アメリカ大リーグのプロ野球選手になる、という夢の実現の為、中高一貫の全寮制の学校にスポーツ推薦で進学が決まっていた。

誰もが羨むような、整った環境での野球を中心とした学生生活が保障されていた。

「俺、中学行ったら野球のことだけに専念しようと思う」

真剣な面持ちでそう告げられたのは、想定の範囲内。

「今まで楽しかった。まりっぺがいたから頑張れた。ありがとう」

そんな優等生的な決め台詞も、鈴木君らしいな、なんて。

彼との関係は極自然に、穏やかな気持ちのままフェードアウト。

今も思い出す、手を繋いで帰った通学路や、一緒に並んで座った図書館の指定席。

一度だけ、軽く触れた彼の唇の冷たさ。


「これからも頑張ってね。応援してる」


そう答えたのは、ホントのホント、偽らざる本心から。

今でも、彼の頑張りを応援してる。

夢が叶うといいね、鈴木君。
< 21 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop