私がいて君がいて
そこには、一人の男。
綺麗な顔立ちで、すらっとした鼻に形のいい唇、何かを見据えているような瞳。
だけど彼は、今にも消えてしまいそうで、思わず私は手を差し伸べた。
「ん?どうかした?」
「…きれい」
素直に出た言葉。
しかし、それが彼の耳に届いたとき彼の目から感情が消えた。
「俺、この顔嫌いなの。だから、あまり言わないでくれないかな、綺麗って。」
その声はあまりにも冷たく、私の心を一気に凍らせた。
「ごめん…っなさい。」
それしかいえなかった。
彼はすっと立ち上がり
「君、変われるよ、きっと。だから、がんばってみれば?」
それだけ残して扉の向こうへと消えてしまった。