私を惚れさせて。私の虜になって。
「…ね」

「…なんなん……」

「男……両手に花?……くそ……」

「いい気して……。ブス」

もうすぐ駅に着くのに。

なんか、私を見てこそこそ話している。

まーくんも、松木も、気づかないから。

…わたしのことかな?

ブスのくせに両手に男子で羨ましいんですか?

見ず知らずの人に悪口言われるとか、萎えるんだけど。

そんな、もやもやとしていたら、もう最寄りの駅だ。

「…行くぞ」

そう言った松木は私の右手首を掴む。

「早く」

そう言ったまーくんは私の左手首を掴む。

「何…なになに」

なんでそんな怒ってんの?

「松木…傘」

私の傘が松木の足に絡まりそうだ。

いつ転ばせてしまうかわからない。

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