私を惚れさせて。私の虜になって。
「…ちょっとね」

「だよな」

松木の手がどこからか伸びてきて、慣れたように手を繋いだ。

外との連絡もつかない、密室のようなところに閉じ込められた私たちは、もうなにもすることはできない。

「明日は出れるかな」

「無理じゃねぇ?」

「やだな」

早く、早く帰りたい。

「いつかぜってぇ帰れっから。辛抱強く待ってろ」

「…でも、私」

そこで口を閉ざした。

言ったらまた、迷惑をかけることになるから。

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