私を惚れさせて。私の虜になって。
「もうこんな時間か…」

圏外の携帯は、11時を示す。

「ここに来てからもう10時間も経っちゃったんだ」

「だな。…寝ようか」

どこからか聞こえてきていた誰かの声ももうほとんどしない。

「そだね」

松木は私の手をいっそう強く握る。

そのまんまって、意味なんだ。

顔が火照っている暇はない。

一瞬だけ手を離して学ランを脱いだ。

私は…セーラーだから、ブレザーの女の子みたいに膝掛けなんて出来ないけど。

「おやすみ」

「うん」

横になんてなれないほど狭い場所で、寒さだけはしのげるように身を寄せあった。

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