私を惚れさせて。私の虜になって。
差し出された手を取って、立ち上がった。

自分でも驚くほどに力が入らなくて。

「大丈夫かよ」

いつまでも手を離さない私を見て、そういった。

「大丈夫じゃない」

「お、素直じゃん」

「…うん」

「はいはい」

私の頭をポンポンと叩いた後に、

「したばっか向いてたら、すがちゃんらしくないぞ」

私の顎を掴んだ。

「私らしいって、何」

「毒舌で笑ってるすがちゃんのことだ」

顔を無理やりあげさせられて、

否が応でも松木と目が合う。

「やだ…」

松木と私なんて、家も、お金も、違いすぎる。

< 223 / 489 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop