私を惚れさせて。私の虜になって。
「言いたくないんなら、いいんだけど」

松木はそう言って、去っていこうとする。

…、待って。

やだ。

「あのさ」

私らしくない。私から、話しかけた。

「ん?」

「私ね、家も学校も大っ嫌いなの。塾は、嫌いなの。意味わかる?」

「…どうした?」

「意味わかるね?だから、塾、大っ嫌いにさせないで」

わがままだけど。

でも。

「…なんで家、嫌いなんだよ」

「嫌いだから」

これ以上は、言わなくても、いい。

必要以上は、いらない。

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