私を惚れさせて。私の虜になって。
「は?」

もう、なんなんだよ。

八つ当たりすんなっての。

「はい。さよーなら」

松木の上着のポケットに無理やりメモを突っ込んで、あとは知らないふりをする。

「チッ」

最後も舌打ちをして、帰っていった。

「…なんなん」

「どうしたんだろうねー」

「怖いんだけど。ひたすら、怖いんだけど」

「すがちゃんは気にしなくていいよ」

俊くんが私に向かって、笑った。

「はぁーい」

そのうち、なんとかなるんだろう。

きっと。

…なんだか。

寂しいような、悲しいような。

こころがぽっかりしている。

…あの時みたいだ。

誰とも話せなくなった、ぼっちになった、部活の時。

あのときぐらい、すごくすごく、悲しい。

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