ぽち。
全ての始まりは、多分、きっと、あの酷い台風の日だったと思うの。
あの時、貴方がずぶ濡れの段ボールの中に入っていた私に、自分の傘をくれた事が始まりだった気がするの。

それ以外、全く覚えていないから。

あの時はただただ寒くて、空腹感からの吐き気を催しても、胃の中には何も入っていないから嘔吐しても唾液混じりの胃液しか出てこなかった。
道行く人は私のことを無視して、挙げ句の果てに段ボールを蹴り飛ばしたり私に暴力を振るった人もいた。
そんな下卑た笑いで傷付いて生きる希望をなくしていた中、貴方だけは私に優しさと温もりを与えてくれて、貴方は私を拾ってくれて暖かい寝言まで用意してくれた。
私はあの日の事を、今でも、これから先もずっと感謝している。あの日の事を忘れたことなんて一度もないぐらいに。
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