僕と三課と冷徹な天使

進捗確認

月末月初はコオさんの嫌いな打合せが続く。

今日は各部そろっての月例会議だ。

コオさんは不機嫌そうな顔で
書類を揃えている。

急ぎの伝票入力など、
僕も手伝える仕事が増えたが
会議は僕にできることがないので
見守るしかない。

そんな気持ちが伝わったのか、

「灰田。私が会議に行っている間、
 みんなの進捗確認しといてくれる?」

とコオさんは僕に言った。

「共有フォルダに進捗確認シートがあるから
 それを一人一枚ずつ書いてほしいんだ」

共有フォルダを確認してみる。

進捗確認シート・・・あった。これだ。

「本人が書いてくれるといいんだけど
 多分みんなやらないから、
 灰田が聞きながら書いて」

「はい。わかりました」

僕は新たな仕事に緊張しながらも
コオさんの役に立てるなら
がんばろうと思った。

「じゃあ、行ってきまーす」

テンション低めに三課を出るコオさん。

「いってらっしゃい」

高くもなく低くもない
適度なテンションで見送る僕。

・・・さて、まず誰から進捗確認しようか。

やっぱりここは
いつも優しいじゅんさんから、
と思ったら、じゅんさんは
珍しく居眠りをしている。

そっとしておこう。

じゃあ・・・誰から聞くかなあ。

残りの三人はみんなアクが強い気がする。

ここはもう席順で八木さんから行こう。

そうすればじゅんさんを
ゆっくり寝かせてあげられるし。

「八木さん、
 進捗確認させてもらっていいですか?」

八木さんの席に行って声をかける。

やはり競馬新聞を読んでいた八木さんは

「ああ、いいよ」

と新聞をしまう。

僕が確認シートを見ながら聞く。

「えっと、まず今とりかかっている仕事は・・・」

「廃棄パソコンの管理」

「はい、わかりました・・・」

メモる僕。

「進み具合はどうですか?」

「型番と台数のリストはまとめてあって
 コオにも渡してる。
 あとは業者に電話するだけ」

「はい、わかりました・・・
 完了予定日はいつですか?」

「・・・」

八木さんが言葉に詰まっている。

変なこと聞いたかな?

書いてあることを聞いただけだよなあ・・・

僕が困っていると八木さんは

「・・・電話するだけだから、今でもいいんだ。
 でも電話が苦手なんだよな・・・」

ぽつりと言った。

・・・そうなんだ。

八木さんはいつも静かで
余裕がある人だと思っていたけど
電話が苦手なんだ。

なんとなく親近感が沸いた。

そして勢いがついてしまった。

「じゃ、今電話しちゃいましょう」

「・・・」

八木さんは黙ってしまった。

よっぽど苦手なんだな・・・

「僕が電話しますよ」

大学の時、レンタルビデオ屋でバイトしていて
延滞しているお客さんによく電話をかけた。

みんな嫌がる仕事なので
だいたい僕がやらされる羽目になり、
電話をかけるのに慣れてしまった。

それにしても
我ながら思いきったことを言ったと思う。

「・・・!」

八木さんが驚いている。

でもちょっと嬉しそうなので
話をすすめた。

「業者さんは・・・」

と言う僕の言葉を待たずに
八木さんは引き出しから名刺と
廃棄パソコンリストを取り出した。

すばやい動きだった。

「この人に電話して、日付を決めて
 廃棄する台数を伝えればいいから」

八木さんにしては早口だったと思う。

「はい、わかりました」

僕は自分の席に戻り、
廃棄業者さんに電話した。

八木さんは心配そうに僕を見ていたが
電話が終わると安堵の顔に変わっていた。

僕は八木さんににっこり笑って
指でオッケーサインを出した。
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