僕と三課と冷徹な天使

吉田

次の日、僕は吉田さんのところへ行き、

「僕も今日から伝票入力を手伝います。
 こっちの伝票もらっていいですか?」

と言った。

居眠りの体制に入っていた吉田さんは

「あ、ああ、こっち全然やってない。
 よろしくな」

と言って、体を起こして
伝票を僕に渡した。

早速僕はキーボードを叩きながら
伝票入力をする。

寝ようとしていたはずの吉田さんは
何となくしにくいのか、
伝票入力をはじめたようだった。

心のなかでほくそ笑む僕。

ランチタイムが近づくと、
さすがに吉田さんも失速したようで
居眠りをしているのが見えた。

僕も気分を変えるために
顧客データ整理の仕事をすることにした。


午後も勢いよくキーボードを叩きながら
伝票入力をする。

ふと思い付いて吉田さんのデスクに行く。

「吉田さん、ここの番号、
 どういう意味なんですかね?」

実は知っているが、
吉田さんが寝そうだったので
声をかけてみる。

「あ、あーそれは、ここの区分の番号なんだよ」

と姿勢を立て直しながら
答えてくれる吉田さん。

「あ、そっか。ありがとうございます」

と言ってデスクに戻り、
また伝票入力をはじめる僕。

そしてやっぱり寝られなくなり
吉田さんも伝票入力をはじめる。

またしてもほくそ笑む僕。


そんなことを繰り返しながら終業時間を迎えた。

みんな帰ったあと、コオさんは

「灰田、おぬしやるのう」

と悪代官のような声を出して言った。

吉田さんと僕のやりとりを
見てくれていたようだ。

「はい。でもメインの顧客データ整理が
 全然進まなかったので
 ちょっと残業します。」

と僕は笑いながら言った。

「じゃ、終わったら教えて。
 ラーメン食べに行こう」

とコオさんは言った。

家が近いのに、一緒に帰るのは初めてだ。

そして、ご飯を食べて帰るなんてことも
初めてだ。

テンションが上がった僕は

「すぐ終わらせます!」

と言って仕事に取りかかったが、
興奮しすぎてあまり効率が上がらなかった。
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