僕と三課と冷徹な天使

やってみよう

そのあと、どうやって帰ったのか
いまいち覚えてない。

きっと夢遊病者のようだったに
違いない。

グーグル先生に
女の子に抱きしめられたんだけどって
聞こうかと思ったが、やめておいた。


なんかもう、いいや。

もしかしたら明日死んだりして
と思いながら、
コオさんの感覚を思い出す。

やばい。

幸せ。

死んでもいいかもしれない。

抱き枕を抱きながら浸っていると
僕も抱きしめ返さないと
いけなかったんじゃないか、
と気づいた。

僕の経験値では全く思いつかない行動だ。

やらかしてしまったかもしれない。

そして、やっぱりグーグル先生に
頼ってしまう僕だった。


月曜日のコオさんはいつもと同じだった。

グーグル先生が言っていたように
きっと挨拶みたいなものなんだな。

がっかりする気持ちがあったが、
安心感のほうが大きかった。

次にまた同じことがあったら
もっと心に余裕をもって
絶対にハグし返そうと心に誓った。


終業のチャイムがなると、
今日も僕はコオさんにお伺いをたてる。

「何か手伝うこと、ありますか?」

「うん、今日も伝票入力
 お願いしていい?」

毎日残業しているコオさんの負担を
少しでも減らすために
僕も残業を手伝うのだった。

ここのところ、毎日伝票入力だ。

「吉田さん、かなり飽きてますね・・・」

前回僕が打った伝票から
あまり進んでいない。

「うん・・・。どうしたもんかねえ。
 今は伝票入力くらいしか
 仕事がないからなあ・・・」

ふと、思い付いて提案してみた。

「あの、今の仕事もちゃんとやるので、
 僕も吉田さんと一緒に伝票入力を
 やらせてもらえませんか。
 吉田さん、一人でやるのか
 つまらないのかもしれません」

コオさんはちょっと考えて

「いいね。よっしー負けず嫌いだから
 いい刺激になるかも。
 どうなるかな。楽しみだね」

と言って、にやっと笑った。

コオさんのこういうところは
本当にすごいと思う。

新人の僕の
無謀な提案を採用してくれるうえに
楽しみと言ってくれる。

「はい。がんばります」

単純に喜んで
やる気になる僕だった。
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