僕と三課と冷徹な天使

わかる

終業時刻を迎えても、
僕とコオさんは微動だにしなかった。

今日は色々あったから、
まったく仕事が進んでいない。

帰るとか帰らないの問題ではない。

帰れないのだ。

ひたすら二人で仕事をしていると、
坂崎さんがやってきた。

僕は坂崎さんに

「お疲れ様です」

と言った。

僕の心の中には、
さっきのモツ鍋の約束があって
カイロのようにあたためてくれるので
何とも思わない。

余裕な自分にニヤリとする。

僕は坂崎さんに

「資料ですか?」

と声をかける。

「いや、違うんだ」

と言って、
坂崎さんはコオさんを見た。

コオさんはパソコンに向かい
ひたすらキーボードをたたいている。

坂崎さんの視線に気づいたのか
手を止めて

「・・・どうしました?」

とコオさんは坂崎さんに聞いた。

「ちょっと話をしたいから、一緒に
 ラーメンでも行きたいなと思って・・・
 忙しいよね?」

と坂崎さんは言った。

「めっちゃ忙しいです。」

と無表情に言って、コオさんは
再びキーボードを叩き始める。

僕が冷たくされたわけじゃないのに
なんだか居たたまれない・・・

思わず僕は、

「あの、いつも月曜日は結構忙しくて
 残業もいつ終わるかわからないんです」

とコオさんの代わりに弁解をする。

すると坂崎さんは

「そうだよね。また連絡するね」

とコオさんに言い、

「ありがとう」

と僕に言って
やっぱり爽やかに三課を出て行った。
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