僕と三課と冷徹な天使

今度は

頼まれてもいないのに
坂崎さんとコオさんの間に入ってしまって
ちょっと疲れた僕は、帰ることにした。

週の始まりだから、無理しないでいいよ、
とコオさんも言ってくれた。

優しいなあ。

ちょっとくらい
坂崎さんにわけてあげてもいいのに。

でも、あの時、

『いいですね、ラーメン行きましょう』

なんて笑顔でコオさんが
坂崎さんに返事をしていたら、
僕は地獄に落ちたな。

コオさんの機嫌が悪くてよかった。

でも・・・そうか、
コオさんは坂崎さんとも
ラーメンを食べに行ったんだな・・・

当たり前だ、つきあっていたんだから。

僕とコオさんが行ったラーメン屋にも
坂崎さんは行ったのかな。

また黒い雲が僕の心に流れ込む。

あのラーメン屋に行くまでの道は
少し狭いのに、車がよく通って
コオさんと僕は、肩が触れるくらい
くっつきながら歩いた。

やけにドキドキしたのを
今でも鮮明に覚えている。

坂崎さんとはもっと
密着して歩いたんだろうか。

肩を抱いたりしちゃって・・・

考えなくていいことを考え始める
自分に嫌気がさす。

本当にどうしようもない・・・

またブラックホールに入っていく。

ふりきりたくて
電車の揺れに合わせて
窓に頭を打ち付けてみる。

こんなことばかりしてるな、俺は。

成長しない。

部長にやきもちを焼いて
頭を打ち付けていたときと
僕とコオさんの関係はずいぶん変わったのに。

そう、ずいぶん変わった。

ふと、モツ鍋の約束を思い出す。

モツ、買っておかないとな。

それで下茹でもしておかないと。

コオさんの家、また汚れたかな。

・・・坂崎さんと付き合っているときも
コオさんの家は汚部屋だったのかな。

坂崎さんも掃除を
手伝っていたのだろうか。

坂崎さんは
僕が入ったことのない寝室にも
入ったんだろうな・・・

・・・僕も寝室に入りたい・・・

思ってしまって、さらに頭をうちつける。

コオさんのベッドは
ふわっと漂うあの香りがするんだろうか・・・

以前見た、コオさんとキスをする夢が
頭の中で勝手に流れ出す。

コオさんのベッドであんなことしたい・・・

止まらない僕の妄想。

ハグされたときに感じた
コオさんのぬくもり。

僕の鼻をくすぐったコオさんの髪。

もっと顔を埋めたい・・・

安全領域を超えた妄想にどきどきし始める。

ブラックホールのほうがマシかもしれない。

帰ったらさっさと寝てしまおう、と
決心を固める僕だった。

< 57 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop