僕と三課と冷徹な天使

モツ

週末、僕はコオさんの家に向かっていた。

下ごしらえ済みのモツと野菜を持って。

もうさすがに緊張しないかと思いきや、
玄関の前に立つとやっぱりどきどきする。

チャイムをおすと

「はーい」

と声がしてドアが開いて
コオさんの顔が見える。

この瞬間がうれしい。

「おじゃまします」

だいぶ靴の整理ができてきた玄関。

靴が脱ぎやすい。

「あ、ゴミ、捨てられたんですね」

廊下に放置してあったゴミ袋が
なくなっている。

「うん、やっと捨てられたー」

寝坊してなかなか捨てられない
と言っていたが
がんばって捨てたんだ。

やっぱりコオさんも
綺麗な部屋のほうがいいよね。

ちょっと嬉しい僕。

台所に野菜とモツを置く。

カバンを置くところも
迷わずにすむようになった。

「DVD見よ」

とソファに座って
コオさんが僕に言う。

「はい」

と言って、DVDをコオさんに渡す。

bumpのDVDは
ビールを飲みながら見るものではない、
とコオさんが言うので、

晩酌タイムよりも早めに来て
先にDVDを見ることにしたのだ。

ソファに二人で座ってDVDを見る。

・・・こ、こそばゆい。

落ち着かなくて
お茶をぐびぐび飲む。

トイレに行きたくなってきた・・・

そんな僕を気にせず、
コオさんはDVDに集中している。

見破られていない気がして、
少し安心しながら

「トイレに行ってきます」

と声をかける。

「DVD止める?」

とコオさんが聞いてくれる。

「あ、大丈夫です。すぐ戻るので」

と言ってソファを立つ。

戦場の最前線から逃れたようで
ちょっとほっとしてしまう。


「あー、bumpちょうかっこいい~」

とDVDが終わってコオさんが言う。

本当にかっこよかったので、
全然嫉妬しない僕は

「じゃモツ鍋作りますね」

と言って台所に立った。

「よろしくお願いしまーす」

と言ってコオさんはソファに寝そべった。

かと思うと

「あ!ビールがない!!」

とコオさんは財布を持って

「ちょっと買ってくるね!」

と部屋を飛び出した。

すごい行動力だな、と笑いながら
僕は見送った。
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