おてんば卑弥呼

解かれた封印2

今まで見たことない楠の木の異変に驚き、姫実は走って境内に向かう。
楠の木に着くと、明らかに今朝と雰囲気が違う。

 いつもは優しく、どんなものでも包む雄大さや優しさを醸し出している楠の木だが。
今はまるで、なにか大きな淀みのようなものや…この世のものではない化け物のような姿に感じる。

 毎朝、見ているのに…。小さい時から側にいるのに…。何故こうも禍々しいのだろう…。
そう思ったその時だった。
突然雷が楠の木に落ちたのだ。

「いやあああああああ!!」

 突然の轟音・閃光…姫実は意識を飛ばしそうになった。
意識が途切れるその瞬間、姫実は楠の木を見た。

 雷の威力なのだろう…楠の木は割れており、木の周りを囲っていた締縄は千切れていた。
そして、楠の木の割れた裂け目から7つの黒い光が出てくるのが見えた。
そこで、姫実は目を閉じた。

「…んぅ」
「姫実!目が覚めたか!?大丈夫か!?」
「…じーちゃん?」

 目が覚めて起きた時、そこは姫実の部屋のベッドの上だった。

「…寝てたの?アタシ…」
「雷が落ちた後、駆け付けたら、お前が倒れていたんじゃ…」
「…よぅ生きとったね、アタシ。普通、死んどっばい…あがん雷…」
「そりゃそうよ!アタシが助けたんやけん!!」
「…へっ!?」

 突然、この部屋にいるはずもない高い女の声が聞こえた。
両親は共働きで、父も母も今は家に居ない。今居るのは自分と祖父である。

「…じーちゃん、女のマネした?」
「いや、しとらん!」
「…どっからしたと?今の…」
「ココ、ココ!こっち見て!!」
「はっ!?」

 声のする方を見ると、それは足元にいた。
なんとも可愛らしい、黄色い鳥のような形をした生き物がそこ居て、姫実の目の前に飛んできた。

「…じーちゃん、なにこの…ちんちくりんな鳥みたいな生き物…」
「姫実…こちらは…」
「失礼かね~!助けてあげたとけ~!!アタシの名前は迦陵頻伽(かりょうびんが)!
特別にビンガって呼んでも良かばい!!」
「…はぁ!?」

 姫実は少し混乱した。突然鳥が喋るわ(しかも半造は何も違和感がなく受け入れている)、自分はその鳥に助けられているわ…どうなっているのか分からなかった。
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop