鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
『ゴメンね、手を離しちゃって・・・・・・。
それでも、無事でよかった!』
そういって再びあたしを抱きしめたお母さんの頬は、涙で濡れていた。
『絖覇くんも・・・・・・ありがとう。
りんといてくれて』
『う、うん』
お母さんが今にも絖覇を、抱きしめんばかりの勢いで絖覇に礼を言う。
なのにどこか、絖覇は不満そうだった。
どうしたのかな?
『よし、お父さんも待ってるし、早く行きましょう!
あ、そうだ!
あそこにアイスクリーム屋さんがあったの、食べに行こう!』
そういうと、お母さんは絖覇とあたしの手をしっかりと離さないように握りしめて、お父さんが待っている場所へと向かった。
『・・・・・・ちゅー出来なかった』
なんて、絖覇が落ち込んでいたことに、そのときのあたしはアイスクリームに夢中で気がつかなかった。
今考えてみれば、すごいことしようとしてたんだな・・・・・・絖覇。
保育園児なのに、ちゅーしようとするとか、どんだけませてたのよ。
でも、あのときあたしが泣いていたから、笑わせようとしてくれてたんだ。
小さなときから、絖覇はあたしのためになにかしてくれた。
あたしを笑わせようとしてくれたり。
落ち込んでいたときは、傍にいてくれた。
悲しいときも、嬉しいときも・・・・・・。