この恋、永遠に。
 長い。手術はまだ終わらない。いつになったら終わるのか。彼女は大丈夫なのか。こんなに時間がかかるということは、もしかしたら………。
 考えたくもない最悪の結果が脳裏をよぎり、俺は慌てて首を振る。
 そんなこと、あるはずがない。

 休憩室に設置されたデジタル時計が深夜0時を表示した。日付が変わった。
 手術はまだ終わらない。もう既に五時間以上が過ぎていた。長すぎる―――。

 深夜の病院。静寂が続いていた中、急に辺りが慌しくなった。
 顔を上げると、ドアの開く音がして手術衣を着たままの看護師が医師であろう男性とこちらにやってくる。
 俺はすぐさま立ち上がった。
 休憩室の扉を開けてこちらから歩み寄る。俺は唇を噛み締め、ぐっと拳を握り締めた。

「ご家族の方ですか?」

 看護師が俺に声をかけた。

「…はい」

 手術はどうだったのか、彼女の容態はどうなのか、矢継ぎ早に質問したい気持ちをなんとか堪える。俺は必死に自分を落ち着かせようと、一呼吸おいて返事をした。発せられた俺の声が震えている。

 医師が一歩前に出た。彼の表情からは何も読み取れない。
 俺の喉がゴクリと音を立てる。手にじわりと汗をかいた。

「もう大丈夫ですよ」

 疲れた顔を和らげ告げる医師の、その言葉を聞いた途端、俺はまるで糸を失った操り人形のように無様にもくずおれた。

「はっ………」

 乾いた声が漏れ、次の瞬間目頭が熱くなる。
 俺は広げた左の手の平で目元を覆った。「ありがとうございます」震える声で、その言葉を伝えるのが精一杯だった。


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