この恋、永遠に。
「はい、もちろん」

 私がにっこり笑って返事をすると、やっと彼はその顔を和らげた。

「大丈夫、今日の君は大人っぽくて綺麗だから。初めて会ったとき、高校生じゃないかと危惧した女性と同一人物とは思えないよ」

「もうっ!」

 軽口を叩く彼に、私は拳を振り上げて拗ねた真似をしてみせた。本当は全然嫌じゃないくせに。柊二さんもそれを分かっているのだ。彼は声を出して笑った。

「行こう、美緒」

「はい!」

 私は彼から差し出された手を握る。彼の腕に自分の腕を絡ませると一歩ずつ、ゆっくりと部屋を出た。



「久し振りだね」

 パーティー会場でそう言って私に声を掛けてくれた人がいた。高科さんだ。三年前より男らしさが増して、精悍な顔つきになっているように思う。

「お久し振りです」

 そう挨拶を返した私は隣の柊二さんを見上げる。彼は黙って微笑むと私から少し離れた。

 柊二さんの社長就任挨拶が終わり、皆が歓談しているとき、私は柊二さんと会場を回り、一通りの挨拶を済ませた。私に合わせてゆっくりと会場を回ってくれる彼のエスコートは完璧だった。
 柊二さんはパーティーの賓客と何やら難しい話をしたりしていて、私にはさっぱり分からなかったが、彼は決して私をないがしろにはしなかった。頃合を見て私にも分かる話題を振って話を弾ませてくれるところはさすがだ。私はもっと勉強しなければならない。

「元気そうだね」

「はい、お蔭様で。高科さんも」

「うん」

 高科さんが笑った。

「関根さんも…新しい職場で元気に頑張ってるみたいだよ」

「そうですか。それは良かったです」

 私も思わず顔を綻ばせた。
 柊二さんが社長に就任するにあたって、組織改変を行ったと聞いていた。私がいた資材部はなくなり、関根さんは総務部に異動となったらしい。彼はそこで備品の手配等を行っていると柊二さんに聞いた。
 彼は、色々考えていてくれたのだ。

 高科さんが、少し離れたところから私たちを見ている柊二さんをちらりと見た。

「社長は本当に、渡辺さん…っと、今は本宮さんか」

高科さんが苦笑する。私も照れた笑みを見せた。

「本当に君のことが大事なんだね。さっきから片時も君を離さない」

「ふふ、そうですね」

「それだけ心配もしているんだろうね。その……足のことは、本当に申し訳ないと思ってる」

 高科さんが頭を下げた。

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