この恋、永遠に。
 私は一生懸命説明した。説明すればするほど、何だか言い訳みたいに聞こえてしまう。そうじゃないのに。

「いや、ごめん。違うんだ」

「え?」

 隣に立つ柊二さんを見上げると、彼は大きな手の平で顔を覆い、言葉を探すような素振りを見せた。

「さっき言ったのは、美緒のことじゃない。その…信じられないと言ったけど、それは美緒じゃなくて…あいつ、孝は頭の切れる男だから。俺と君が偶然出会ったとは考えにくくてね」

「あ……」

 私はつい先ほど、孝くんが言っていた言葉を思い出した。“半分偶然、半分必然”、孝くんは確かにそう言っていた。

「じゃあ、孝くんは私と柊二さんが出会うことを予想していたということですか?」

「……恐らくね。それどころかこれはアイツが…」

 仕組まれた出会いが不本意だったのか、柊二さんが乾いた溜息を漏らす。
 二人の出会いが仕組まれていたとしたら、柊二さんは私への興味をなくしてしまう?離れていってしまう?私の胸が切なく喘ぐ。
 そこへ、電話を終えた孝くんが戻って来た。

「ごめん、多分聞きたいことは山ほどあるんだろうけど、僕、もう行かないと」

「おい」

「本当悪い。詳しい話はまた今度するから。美緒ちゃんも、またね」

 それだけ言うと軽く手を上げて、孝くんは去ろうとする。そして何か思い出したように体を翻すと、私のところへ戻ってきて耳元で一言囁いた。
 私の頬は瞬時に熱を帯びていく。そんな私を楽しそうに眺めた孝くんは、今度こそ人混みの中へと消えて行った。

「まったく……あいつに何を言われたんだ?」

 柊二さんが赤くなった私の頬をさらりと撫でる。それだけで私の顔は沸騰しそうだ。
 仕組まれた出会いでも私は構わない。こんな幸せがあるのなら。

『柊二はよほど君が大事らしいね。アイツのあんな顔、初めてみたよ』

 私の頭の中で、孝くんの去り際の言葉がリフレインした。


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