この恋、永遠に。
 不敵な笑みでそれだけ言うと、沢口はいつものように、淡々と今日のスケジュールを読み上げた。ああ、早く美緒に会いたい。


 朝一で始まった会議が終わったのは十時半を過ぎていた。予定より三十分も遅れている。この後、新規展開する店舗との打ち合わせがあり、終わったら食事会だというのに。俺は少し苛つきながらこの後の打ち合わせで必要な資料に目を通し始めた。

「専務、ちょっといいですか?」

 ドアがノックされ、沢口が入ってくる。

「ああ、どうした?」

 俺は資料から目を放さずに促した。

「渡辺さんの有給なんですが……」

 美緒の名前が出て、俺はすぐに資料から顔を上げる。

「美緒がどうかしたのか?」

「ええ、専務に言われたとおり、有給申請を出しておいたんですが、渡辺さん、今日は出社しているみたいですよ。有給取消し申請が来てます」

「美緒が出社している?」

「ええ、間違いないです。勤怠表も確認しました」

 沢口が言うのなら間違いないだろう。この男は優秀だ。俺は確認しそびれていたプライベート用のスマホを取り出してメールをチェックした。

 案の定、美緒からメールが来ている。確認しなかった俺が悪い。
 それにしても、美緒は大丈夫なのだろうか。昨夜は無理をさせたし、初めてだった彼女にとって、今日はまだ体もつらいに違いない。彼女のことだから無理をしていそうだ。後で様子を見に行ってみよう。
 俺は資料に急いで目を通すと、少し早めにオフィスを出た。

 美緒のいる資材部は一階だ。俺はエレベーターで一階へ降りるとまっすぐ資材部へと向かった。総務のある東側とは違って、こちら側はやや薄暗い。電気が切れ掛かっているのもあった。今までここに足を踏み入れたことがなかったから分からなかったが、これは何とかしないといけない。今まで放置されていたことは問題視しなければならないだろう。
 資材部と書かれたプレートもかなり古びている。これも新しくした方がいい。俺はそのプレートを睨みながらドアをノックした。「はい」と可愛らしい返事がしたのでドアを開ける。
 そこには今朝別れたばかりの、愛しい顔があった。

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