もう一度、あなたと…
二、三度繰り返したら呼吸が楽になった。
顔色の良くなった私を見て、「たからがひかる」が安堵する。

「一昨日に引き続いて今日もなんて…勘弁してくれよ」

手を握ったまま深い息を吐く。
寝起きで乱れた髪の隙間から、眉を歪ませる彼の顔が見えた。

「…ひかる…」

名前を呼んで髪を撫でた。
今の私はどっちの私か、自分でもよく分からない…。

目線を上げた彼の顔が近づく。
その首に腕を回して、目を閉じた。

重なる唇から安心感が伝わる。
たった一日していなかっただけなのに、キスは私の心の奥深くにまで入り込んできて、気持ちを穏やかにさせた。
何もかも…忘れさせてくれそうな優しさに、不安が溶けていくのが分かる。
その瞬間、最後の一線すらも、どうにでも良くなりそうだった。


「…エリカ…いいのか?」

確かめる「たからがひかる」の問いに答えるのに時間がいった。
答えに詰まるという事は、まだまだ…という証拠。
首に巻き付けられてた腕を緩めて、彼が指先にキスをした。

「焦らずにいよう…まだ始まったばかりだし…」

囁く声に頷く。

ぎゅっと握り合った手の温もりも…いつまでも…変わらないでいて欲しい…と強く願ったーーーーー。

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