俺様社長と秘密の契約
「・・・何を言ってる、理子?」
怒った顔をしてるわけでもなく、悲しげな顔をしてるでもなく、無表情に近いその顔で私に問いかけた龍吾。

「…言葉通り、です。『御堂社長』とは、結婚できません」
「本気で言ってるのか?」

その言葉に、涙を流しながら、頷く。

「それならば、なぜ泣いてる?」
「・・・」

本当は、龍吾と結婚したい。大好きな人と、結婚し、大好きな人の赤ちゃんを産んで、ただ静かに暮らしていきたいだけ。

そんな小さな幸せでいいのに、それすら叶わない。
…私が、神宮寺財閥の後継者で無ければ、こんな事には、ならなかったのかもしれない。

…今更そんな事を思っても仕方がないのだけど。

「これ以上、理子を、苦しめないでくださいよ、兄さん」
「・・・」

「兄さんに会えば、理子は心を痛めるだけだ」
そう言って溜息をつく龍介。

「…理子の心を痛めつけてるのは、本当に俺なのか、龍介?」
龍吾の言葉に、龍介は一瞬黙った。

…しかし、すぐに、いつもの笑顔に戻り、龍吾に言った。

「…あまりに当然のことを言ってるので、驚きましたよ」
「・・・」


「理子を傷つけているのは、兄さんだよ」
そう言い残し、龍介は、私を強引に、アパートの中へ連れて行った。

・・・・。

部屋の前、龍介が足を止めた。
そして私の方を向くと、私の顎を片で出もち、自分の方を向かせる。

…私は、龍介を睨んだ。

「睨んだって全然怖くないよ。どっちかといえば、可愛くてそそられるね」
その言葉に絶句する。
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