俺様社長と秘密の契約
会社を出た私たちは、駐車場に向かわなかった。

先を歩く御堂社長は車に乗ることなく、歩道を歩いていく。


「…今夜は車には乗らないんですか」

「…酒を飲んだら、運転できないだろ」

「・・・」

確かに。酒気帯び運転は違法だ。

さっさと歩く御堂社長の後ろを、必死について行く。

この人は人に会わせると言う事を知らないみたいだ。

溜息をつきながら早足で歩いていると、ピタッと足を止めた。


…ショウウィンドウに飾られてるネックレスに釘付けになってしまった。

あまりに綺麗なそれに、目をキラキラと輝かせて。


「それが欲しいのか?」

「・・・え?」

突然横から声をかけられてハッとする。

・・・御堂社長が一緒だったと言う事を一瞬忘れてしまっていた。


「いえ…違います」

・・・欲しいと言えば、御堂社長は何の迷いもなく買ってくれるだろう。

だがしかし、御堂社長に買ってもらうくらいなら、自分で買う。

…とはいえ、15万もするネックレスなど、私の給料では手が出ないけれど。


…私を数秒見つめていた御堂社長は、私に何を言うでもなく、そのジュエリー店に入ってしまった。

その行動に驚くばかりで、固まってしまった。
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