俺様社長と秘密の契約
神宮寺邸に着いた私達は、急いでドアの前まで行くと、勢いよく叩いた。

すると直ぐにドアが開いた。

「理子さん、龍吾さん、お待ちしておりました」

竹田の後に続いて、善一郎の寝室に向かった。
静かにドアを開け、絶句する。
…沢山の器械に繋がれ、数本の点滴。
酸素マスクをしている口が、微かに動いていた。

「…お爺様」
泣きながら、手を握り、名前を呼んだ。

…すると、ゆっくりとお爺様の目が開いた。…まるで、私を待っていたかのように。

「…理、子」
「…はい」

「…龍、吾は?」
「…ここにいます、会長」

私達の顔を見て、お爺様は微かに笑う。

「…龍吾、理子の事…頼んだぞ」
「…勿論です」

「…理子、短かい時間だったが、とても幸せだった…有難う」
「…私も、幸せでした」

「理子…あのラブレターは読んだか?」
その言葉に首を振る。まだ、封すら開けていなかった。

「…読んだら、竹田の所に行くんだぞ。
…理子…もう少し、お前と楽しい時間を…」

「…お爺様‼︎」
「会長‼︎」

お爺様は、ゆっくりと目を閉じた。
…お母さん、お父さん、お爺様を宜しくお願いします。

泣きながら、手を握りしめ、天国にいる両親に、何度もお願いした。

…ガチャ。
沈んだ部屋の中に、誰かが入って来た。

「…死んだのか、…兄貴」
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