きみは、わたしの名前を呼んではくれない。


「じゃあこれかしてもらうね」


「うん、仕方ないからかしてあげるね」



また小さく笑った彼に、わたしもへらりと笑顔を返した。



すごく馬鹿みたいな笑い方をしてたんだろうな。


でも今はそんなの全然気にならないや。



今日はこんなにも彼の笑顔を見れるなんて、幸せすぎるかもしれないから。


そんなことを思って自分の席に戻るわたしは、スキップをしながら鼻唄でもうたいたい気分だ。



そのとき。


「わっ」



どんっ、と後ろからの衝撃。


思いがけもしなかったそれに、わたしの体はぐらりとバランスを崩す。



「彼女ぶってんじゃねーよ、ブス」


「え」



ぼそっと耳元で囁かれた低く冷たい声に、体が硬直する。

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