大切なものはつくらないって言っていたくせに
駅に着いて、トランクから彼女の赤いキャリーケースを出す。

「ありがとうございます。」
もう一度ペコリと頭を下げる。

「今日、君から聞いた話は、佑樹に言ってもいいこと?」

「別に、構いません。」

「あいつ、ショック受けると思うけど?」
俺はちょっとふざけた風にいう。

「まさか。瀬田さんには周りに素敵な女性いっぱいいますから。作家になってますますモテちゃうんじゃないですか?」
一ノ瀬遥は笑顔で言う。

「・・・・・・。」

「それじゃあ。本当に今日はごちそうさまでした。」

「待って。」

「・・・・・・。」

「言っておくけど、佑樹と君がどんな関係だったか俺はわからないけど。 でも、今、祐樹はものすごく君に会いたがっているのは確か。で、祐樹がこんな風に一人の女の子に執着するのも、俺の知ってる限り初めて。」


「・・・・・・・。」

俺は少し笑って
「気が変わったら、いつでも連絡して。 会ってやってよ。佑樹に。
あ、それとこれとは関係なく、何か仕事で関わる事があれば是非よろしくね。」

そう言って、立ち尽くす彼女を残して俺は車のエンジンを入れてその場から去った。
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