大切なものはつくらないって言っていたくせに
俺はふんっと鼻で笑って、
「でも、別れたってフェルから聞いたけど?」
「知ってて、言うんだ。やな男。」
遥は、ムッとして呟く。
「フェルもおしゃべりなんだから。。。」
俺は、遥をもっといじめたくなる。
「仕事は大変だったにしろ、男にフラれたからって店を空けるのは、プロ意識としては感心しねえな」
遥は涙目になって俺を睨む。
遥が目を伏せて閉じた瞬間、大きな涙が落ちる。
その涙が、会ったこともない遥が真剣に想いを寄せていた男に対してのものだと思うと、強い嫉妬心が芽生える。
「連載うまくいったの報告しようと思ってスカイプしたら、その場で、もう成功したんだからいいだろって。実は、結婚するって。もうおまえのことなんか待てないし、目指す道はそれぞれもう違うのは明らかだって。」
ポロポロ涙流しながら、遥は、告げる。
「……………。」
当たり前だ。俺の方が、おまえの連載をこんなに嬉しく思ってるのに、なぜわからない。
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