夏の日

甥っ子

「今日仕事は?」
「もうそろそろ行かなあかん。あの路上に止めてある
トラックで現場へ行って帰ってくるのは6時ごろ」

「そうか、わしは柏と原宿と蔵前を回って6時に寄るわ」
「わかった。選挙の応援やろ。柏って?前の嫁さんの?」
「そうや、娘が3年前に結婚しての、去年二人目が生まれた」

「ほうか、もうおじいちゃんか」
「そうよの。男の子らしいんじゃが、こういう機会がないと
とてもよう会えん」

「そうやな。連絡はしてあるんか?」
「いやまだや。現場に着いて番地探しや。会えんかったらそれまで
じゃ。もう一生来る事はなかろうて。縁があれば必ず会える」

「そうじゃの。勇気を奮い起こして何でもチャレンジ !
兄貴、これは一生俺も変わらんよ」
「そうや、それがすべてじゃ、はっはっは」

二人、元気が出てきて大笑いした。
さあ出発だ。午前9時前、陽射しはかなりきつくなってきた。

西船橋から武蔵野線に乗り換えて柏へ向かう。この時間帯はとても
すいていてゆっくりと田園地帯を走る。

冷房がよくきいていてとても涼しい。時折停車駅でドアが開くと
熱風が入り込んでくる。外は猛暑に違いない。もう一度乗り換えて

10時半に柏駅に着いた。キャタピラー三菱との記憶を元に
松葉町を探した。外は猛暑だ。バス停前で路線を探す。流れ出る汗。

もう30度は軽く越えている。すごい陽射しだ。路線はよく分からない。
近くの人に聞いた。乗り場は向こう側だそうだ。30分に1本。

今のうちに食事を済ませておこう。もううだるような暑さの中、
向かいの中華料理店に入る。あー涼しい。温度差が体の隅々まで浸透する。

中華丼を注文し冷たい水をごくりとひとのみ、やっと我に返った。
テレビが猛暑を伝えている。熊谷40度とか言っている。

体温以上の猛暑だ。熱中症に注意。睡眠不足もあって目を閉じれば
すぐにも眠ってしまいそうだ。
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