今度こそ、練愛
一ヶ月後に行われるジュエリー部門の展示会の会場に、私たちに花を飾る仕事。展示会のテーマは主にブライダルだという。
「構える必要はない、ショーウィンドウに飾ってくれたような、主張し過ぎず清楚な感じで纏めてもらえればいいと思う」
「そうね、私たちは脇役だから気楽に臨めばいいわね」
山中さんの言葉に付け加えて、高杉さんが私たちの顔を見つめる。仲岡さんと私は大きく頷いて返した。
岩倉君はちょっと俯いたままで、聴いているのか聴いていないのかよくわからない感じ。無愛想なのは今に始まったことじゃないから不自然ではないけれど、山中さんが来た時に岩倉君が居るのは珍しいかもしれない。
「いや、脇役でもないよ。結婚を意識した顧客に、この店で花を頼んでみたいと思ってもらえるようにしっかりとアピールしてもらわないと」
「それって主張していることになるんじゃないの? 難しいわね」
山中さんに突っ込む高杉さんを見ていたら、何にも気にすることなんてなかったような気になってくる。
「とりあえず忙しい時だけど頑張ってほしい、詳細が決まり次第知らせに来るから」
「わかりました、よろしくお願いします」
高杉さんに続いて、仲岡さんと私も礼をした。