今度こそ、練愛

胸の中でぐるぐると渦巻いていた様々な迷いが、嘘のように消えていく。



「うん、知ってるよ。昨日は仕事じゃなかったんだよね?」

「もしかして、見てたのか?」

「見てたというか、見えたの。ちょうどこの店の前を通りがかったら、車道の向こう側に昭仁がいたの」

「そうか、見られてたのか……」



大きく息を吐いて脱力した昭仁の顔には諦めの色が滲んでる。
私も覚った。



もう、終わり。



「昭仁、私たち別れよう」



ごく自然に溢れ出てきた別れの言葉。
穏やかな声はきっと気持ちの表れだろう。
胸も痛くないし、むしろ清々しさすら感じる。



これ以上、何にも聞こうとは思わない。
未練がましい女にはなりたくないから。



「ごめん、今までありがとう」



最後になって、ようやく昭仁は謝ってくれた。付き合って間もない頃に見覚えのある、包み込むような優しい顔をして。





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