今度こそ、練愛
昼休みに私の席へやって来ると思っていた昭仁は来ず、代わりにメールが届いた。
今日の定時後、駅前のカフェで待ってるとそれだけ。
きっと昭仁も覚ったのだろう。
私に嘘がバレたと。
約束のカフェは昨日、店先でカップルが喧嘩をしていたカフェ。ここから大通りを挟んだ対岸の歩道では、昭仁が他の女性と一緒に歩いていた。
私が店に着くと、昭仁は先に着いて店内で待っていた。
「お疲れ様、今日は早く帰れてよかったね」
また余計なことを言ってしまう。
もう嫌みなことは言わないでおこうと思ったのに、無性に腹が立って言わずにはいられない。
「お疲れ」
小さく息を吐くように答えて、昭仁は椅子に背中を預けて私を見据える。
午前中に職場で見せたおどおどした様子はなく、今まで見たことのないような怖い顔。
「どうしたの? 昭仁が何を怒ることがあるの?」
「有希、いい加減にしろよ。知ってるんだろ?」
私の言葉をぴしゃりと掃うような強い口調。
昭仁も覚悟している。