今度こそ、練愛

『あっ、大隈さんは松下君と付き合ってて別れたばかりでしょう? もう新しい彼氏なんて早すぎない?』



一緒に話してるのは私より十年先輩の総務課所属のお姉さん。面倒見はいい人だけど社内の噂には敏感だから、要注意とも言われている。



お姉さんの言った松下君とは昭仁のこと。昭仁と私が付き合ってたことも、別れたばかりだということも知ってるなんて、やはり情報通だ。



新しい彼氏って、まさか……
ふと浮かんだのは川畑さんのこと。



あの時、もしかしたら見られていたの?



嫌な胸騒ぎを感じながらも、うんと耳を澄ましてみる。



『私も早すぎるからまさかと思ったんですよ、でも、見間違いじゃないし……あんな所で堂々とキスできるような人だから切り替えも早いんじゃないですか?』



一気に背筋が凍りつく。
手に持っていた雑巾をぎゅっと握りしめるけれど、胸の鼓動が加速していく。




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