今度こそ、練愛

言いたい放題言って満足したように、花奈は田舎に帰って行った。



私の嘘は誰にも話さないと約束してくれたけど、いつバレるのかは時間の問題。バレる前に早く彼氏を作るか、母には時期が来たら話そうか、当面の悩みどころだ。



花奈に言われたようにリミットも近いことだし、なんとかしなければ。



「おはようございまぁす」



いつも通り、さらりと挨拶をしながら席に着く。



休み明けの月曜日の朝は、始業のチャイムが鳴るまで机の上を掃除するのが職場の決まり事。ささっと机周りん拭き掃除して、雑巾を洗うためトイレへ。



するとトイレの中からひそひそと話す声が聴こえてくる。きっと仕事の愚痴か何かだろうと気にも留めず、入ろうとして足を止めた。



ぼそぼそして聴き取りにくい声だったけれど、今確かに私の名前が聴こえた。
とっさに一歩下がって、トイレの入り口で息を潜める。



『本当に見間違いじゃないんです、大隈さんだったんですよ』



この声は隣の課にいる入社二年目の女の子。
声のトーンはできるだけ落としているようだけけど、もともとよく通る声だからまる聴こえ。



私、何かしたのかな?
とくに彼女と接点はないし、思い当たることは何にもないけれど。





< 41 / 212 >

この作品をシェア

pagetop