今度こそ、練愛

よく聞くと福沢さんは、半年ほど前から私のことを気に入ってくれていたらしい。半年前と言えば、私が福沢さんと仕事で関わり始めた頃。



そんなことに気づきもしなかったのは、私がまだ昭仁と付き合っていた頃だったからかもしれない。



木戸先輩は福沢さんの相談に乗っていたのだとか。私が昭仁と別れたのをチャンスだと懇親会を設定したという。
なんて浅はかなんだろう。
下心いっぱいの作戦。


失敗した結果ら福沢さんに散々責められたと木戸先輩は嘆く。
そんなこと言われても私には関係ない。
素知らぬ顔をしていると、いきなり木戸先輩が頭を下げた。



「だったら大隈さん、一緒に福沢さんに謝りに行ってくれないか?」

「ええ? 何を謝るんですか?」



何をバカなことを……
謝ってほしいのは私の方だ。



「君が断ったことを福沢さんに謝ってくれればいいんだ、失礼しましたって、それだけでいい」

「どうしてですか? 私、謝らなきゃいけないことなんてしてません」

「いいから……とりあえず謝ってくれ、死活問題なんだ、もう仕事を頼まないと言われてる」



顔を上げたら木戸先輩の目が潤んでる。



それって、パワハラじゃないの?



仕事に私情を持ち込むなんて、公私混同するなんて最低。しかも私が悪いわけじゃないのに謝らなきゃいけないなんて、絶対に納得できない。




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