今度こそ、練愛

やっぱり嘘をついた罰が当たったのかもしれない。
すぐ決まると思っていたのに、なかなか決まらないで時間が過ぎていくばかり。



虫の知らせ、というのだろうか。
就職活動が難航しているところに、ちょうど母から電話があった。



まさか会社を辞めたことがバレたのかと焦ったけれど、



「今日荷物送ったから、明後日ぐらいには届くと思うから受け取ってね」



という大したことない内容だったからひと安心。



「ありがとう、金柑ジャムでしょう?」

「正解、ジャムにしたのと生も入れておいたから、自分で甘露煮でも作りなさい」



毎年今頃の時期になると実家の庭に植えた金柑の木にたわわに実ができる。母は風邪予防にと金柑でジャムや甘露煮を作ったり、金柑酒を漬けたりして忙しい時期なのだ。



「そろそろ送ってくるんじゃないかと思ってたところだったの、甘露煮めんどくさいなあ……」

「何言ってんのよ、それぐらい簡単でしょ? 面倒だったらそのまま食べてもいいわよ」

「うん、そうする」



いつものように作らないつもりで答えたけど、今回は作ろうかなあ……
今のところ、たっぷり時間もあることだし。



「あ、それでね。金柑ジャム、昭仁さんにもひとつ渡してもらえる?」



思いも寄らず母の口から出てきたのは昭仁の名前。息が止まりそうになる。


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