今度こそ、練愛

すっかり安心していた午後、高杉さんが配達へと出かけていった。



時折来店するお客さんに対応する仲岡さんを見ながら接客を勉強したり、お客さんのいない時には仲岡さんに花の手入れを教えてもらったり。新しいことを覚えるのって楽しい。



だけど、ひとつ気がかりなことがある。



「配達の仕事もあるんですね、私、ペーパーで車の運転が苦手なんですよ……どうしよう」



仲岡さんに弱音を吐いてしまった。勤務初日か早速弱音とは情けないと、言ってしまってから気づくところも情けない。



「大丈夫よ、配達は高杉さんが行ってくれるから。私たちが配達するのは、車に乗って行かなくてもいい近場だけよ」

「本当ですか? よかったぁ……、自転車なら乗れるので任せてください」

「大隈さん、すごく運転好きそうな感じなのに? ひとりで車乗って、どこでも行きそうな感じだよ?」


それって、どういう意味だろう。
ひとりで飲食店で食事することもできるし、どこでも行けるというのは間違いではないけれど。少し考えさせられてしまう。



「そんなことないです、本当に運転は苦手なんですよ、歩いてならどこでも行きます」

「そうだ、高杉さんに付き添って配達に行くこともあるけど、高杉さんが運転してくれるから安心して」



仲岡さんの言葉に安心して、花と向き合った。




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